2004-11-28から1日間の記事一覧

洪水の前に

その夜、鯨の夢を見た。 朝になって、ぼんやりとした予感に襲われながら、支度を済ませて、学校にいこうと、ドアを開けると、まだ、ドアを開ける前から、匂いだけはしていたのだけれど、はじめに目に入ったのは白い可憐なかがやきで、ついで、雪が降ったのか…

テンペスト

結局、森の側の高速道路をつくろうとして永遠にサスペンドになってしまった工事現場、というか元工事現場に三人で穴を掘った。真名は、そこに、ビニールシートで床を作り、水を張るのだ、といった。何でそんなことをするんだよ、と聞くと、ここに海を作るの…

取替え子とうそ

ところでれいきというのはぼくの呼び名だった。その夏、真名はある朝、穴を掘る必要があるんだけど手伝ってくれない? といった。そこでユウイチはもういないのでぼくが手伝う羽目になったのだけれど、それで穴を掘ってどうしようというんだ、と聞くと、真名…

ろーまをほろぼしたのはなんにんですか

厳密に記録に従うならば、世界は三日前に創造されたという話だ。

海辺の家で ・ 立ち去るものとやってくるもの

「……あとから考えてみると、その人影こそが、北朝鮮の工作員だったのです。」 うさんくさいモノローグをしとやかな口調で真名がベランダから海に向かって投げていた。だからぼくもどうでもいいことを言うことにした。だが、そんなにうまくでたらめなことはつ…

 花が殖えていく

「もしもあたしが花に生まれ変わったらどうする?」 いかれた女がいう。どうするもこうするも、そんなことはおきない。真名が気にかけているのは所詮だれが自分を見ているのかということだけだ。警戒警報のような、すでに覗いている何か恐ろしいものに魅入ら…

夢も見ずに眠っていた

地方都市というのははっきりとした境もないままにひろがる町の、そのまたはっきりとしない集まりだ。比較的大きな駅のある町がほかの町々と部落から中心とみなされてはいるけれども、ほとんどほかの町と大きさの違いなどありはしない。違いはただ駅がある、…