イスラエル

http://d.hatena.ne.jp/spacelab/
http://d.hatena.ne.jp/cider_kondo/
いつのまにか面白い話に。

ぼくは細かい話にはたちいらないけれども、問題状況の存在そのものが知られることは決定的に重要だと思う。その意味で、単なる辞書的定義以上に、キーワードに、そういう資料へのリンクが張られ、入り口として機能することは期待されていい。

 イスラエルはたしかに不正を行っており、そのことが反テロという名目の中でかき消される傾向がある。デイビッド・グロスマンなどのイスラエルの中のさまざまな多様な声も存在するわけだし、問題は複雑だが、基本的には、イスラエルの不正についての記述は、イスラエルのごく穏当な記述と併記されるだけの価値があるだろう。(その意味で私は現在の記述は、ちょっと辞書的過ぎると思う)もちろん、そこには、イスラエル世俗右派やネオコン的な立場からの記述も追加されていい。(本当は、もっとつっこんで、イスラエルの存在を認めないイスラエル宗教右派という立場の記述もあるともっと面白いけど)

 そこに葛藤があることを知ることは、どの立場を選択するか以前に、ともかく必要なことだ。どちらの陣営であれ、成功した不正は、葛藤の存在そのものを隠蔽する傾向にあるのだから。

 わたしたちは歴史的出来事に対するような中立的な場にいるわけではなく、つねに巻き込まれている。

 キーワードのはなしを別にしていえば、最近のシャロンの政策はどう考えても異常で、防衛的反応こそが暴虐に直結するのだということを明確に示しているけれども、その野蛮の報道はあまりにも少ない。それに対してパレスチナ自爆テロは比較的大げさに取り上げられる。たしかに殺される人間には殺す人間にやむをえない事情や理想があるかなどどうでもいいことだ。しかし、戦車で一般市民の居住区を蹂躙し、日常的に封鎖を行う軍隊と、それに対抗する過激派のテロルを同列に論じるのはあきらかにバランスを失している。

 おもに王制の湾岸アラブ諸国は建前としてはイスラエルを非難せざるを得ないが、それらが、アメリカの支援を大前提にして、それぬきには存続し得ない世俗の腐敗した非民主的体制である限りで、実際にはイスラエルの生存を脅かすような意図も動機もない。(皮肉なことに、アラブが民主化され、真に民衆に基盤を持った政府がアラブ諸国で成立すれば、短期的にはイスラエルの生存はおびやかされるかもしれない。)エジプトやイラクもその点では同様だろう。だから、実際にはパレスチナ問題をイスラエルアラブ諸国という枠組みで考えるのは正しくない。アラブ諸国民とイスラエルの間に対立があり、それがイスラム系の非政府組織を通じて現実化しているので、事実問題としてイスラエルの生存が危機に瀕しているかといえば答えには否定的だと思う。

 勿論、すでに建国されてこれだけの年月が経って、イスラエルの存在そのものをどうこうすべきという議論はまちがっているが、イスラエルの建国そのものは根拠のない行為で、不正であった、ということは確認しておくべきだと思う。(無論、反対の意見も参照してほしい。エクソダス号事件とか、ホロコーストとか)そのことへの理解を抜きにすると、パレスチナ問題は単なる宗教対立に見えてしまう。