貨幣論 降旗節雄『貨幣の謎を解く』白順社、一九九七 ISBN:4834400506

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宇野派からの岩井の議論への批判。

やっぱり一番重要な批判は、「価値形態の図式はひっくり返せない」というところに集約されていると思う。貨幣で商品を買うということは、決して、商品で貨幣を買ったことにはならない。この決定的な非対称性を岩井は見失っている、という論点である。

この差異は、岩井が流通の場面、つまり観察している時点が、交換が今終了した時点であるのに対し、宇野派のマルクス経済学は、価値形態論とは、商品として売りに出され、価格表示がなされたが、まだ交換によってその商品の価値が価格と一致することが実証されていない場面を想定することだ、としているところからきている。

このへん、ケインズ流動性の議論と概念的には近似するところ。あと、宇野派は実質的には労働価値説を放棄していると個人的には思う。