言語学の本を読んだ。
ジョルジュ・ムーナンのやつ。マルティネとバンヴェニストを読みたくなった。それにしても、ぼくはおそらく最良の場合でも、ロマン・ヤコブソン的な方向にしかいけない気がする。性格的に。チョムスキーの議論への違和感は再確認。変形操作と記号化は残る業績だろうけれど、その普遍主義的な、哲学的な前提は残らないだろうというあたり。生成変形文法が機械翻訳に親和的なのはもともとアメリカのローカルな事情への反動として出てきたチョムスキー文法が、機械翻訳研究のインパクトの文脈の中で議論を形成したから。あと変形操作は表層だけの水平な変形だけで考えてもおそらく無矛盾な議論が作れるだろうと思う。チョムスキーがアメリカ以外の国際的な言語学の現状を、アメリカ構造言語学と同じものと誤認して批判していた、というムーナンの指摘は面白い。あとやっぱサピアは読んでて気持ちいい。ムーナンはロシア・フォルマリズムには批判的。しかしシクロフスキーはかなり面白いし有効だと思う。マルクス主義者としてムーナンは最後の章を書いてるんだけど、バフチンが出てこないのは「発見」まえということなんだろうなあと感慨。まあ、バフチンは言語学というより文芸学なのだろうけど。スターリン言語学について肯定的に触れてあった。マールのやばげな行き過ぎを引き戻したということらしい。