短歌日記イラク戦争

 死ぬほどの憂鬱ゆえにこころあらばいくさのことはむねにひそめよ

 いくさとはむなしき言の葉にしあれいかに夢見む血まみれの日に

 義しきと揚言せむはおろかとぞきみがうつろなニヒリズム聞く

 言葉こそ武器だとひとは思うらしすでにうつつを愛すひとなし

 平和という漢字を書いて悩みつついつくしむべき声音うしなう

 言葉とは夢の繁殖うつくしき敵なるひとと交わすやさしさ

 夢のうちに夢の楽土ぞあれよかし幻に似たうつつ騒がし

 きざしやらしるしとやらに飽き果ててただくろがねのかたさ恐れし

 世も知らずいくさも知らず義も知らずひとえにきみの言葉求めし

 いくさの日過ぎ去りし車体をながめつつ轢殺される我を仮想し