蒼穹
空を見上げるたびに思うのは、これほど巨大な虚無とつねに接して生きていながら、ひとはなぜ正気でいるのだろうということだ。天蓋の空ではないが、無限は概念ではない。たんなる所与だ。
グランドキャニオンどころではない巨大さ、空の雲は異様なほど大きいし、こことそことの距離は東京ドームなどでは測れない。
だが、本当に恐ろしいのは、星とわれわれの間には何もないということだ。
想像せよ。巨大な原っぱにいて、何十キロも先に友人がいて、手を上げたら、間に何もないのですぐわかったとしよう。これは恐ろしいことである。
感覚の問題なので説明はしない。